|
遙か遠い昔
闇の世界に
一筋の光と共に現れた
光の天女が
小さな星を救いあげ
光で そっと包みました |
|
|
すると その瞬間
星には 1つの命の灯が宿り
美しくゆらゆらと星を照らし出しながら
巫女へと 姿をかえてゆきました
巫女の姿を
愛しそうに見守っていた天女でしたが
しばらくすると名残惜しそうな光と共に
また闇の彼方へと
消え去っていきました |
|
|
天女が去った後も
巫女は輝きをましながら
星を照らし続けていました
ところが 闇は
長い年月をかけて
少しづつ 少しづつ
巫女の光を飲み込んで
とうとう 巫女を
龍の姿へと 変えてしまいました
|
ある時 光の天女が舞い戻り
そっと光で包みこもうとしましたが
龍は闇の炎を高らかに掲げて
光の天女を追い払ってしまいました |
|
|
ある時 緑の天女が舞い降りて
草木で星を包もうとしましたが
龍は 闇の炎で
草木を焼き尽くしてしまいました |
ある時 音の天女が舞い降りて
優雅な笛の音で
闇の炎を鎮めようとしましたが
龍は 大きな唸り声で
笛の調べを かき消してしまいました |
|
|
ある時 水の天女が舞い降りて
雨を降らせて
闇の炎を消し去ろうとしましたが
龍は 闇の炎を振りかざして
雨を一瞬で消し去ってしまいました |
ある時 風の天女が舞い降りて
風のコトバで
そっと語りかけようとしましたが
龍の放つ 闇の炎は
勢いを増すばかりで
とうとう星の全てを
焼き尽くしてしまいました |
|
|
焼き尽くされ
何もかも失った星は
次第に凍てつきはじめ
寒さに凍えて動けなくなった龍の前に
氷の天女が舞い降りて
星と龍を雪で包んでゆきました
「やっと 貴方を
包むことが出来ました・・・」
「お前は・・・何者だ!」
龍は凍てついた声を
やっとの思いで
喉元から押し出しました
|
すると氷の天女は
龍にそっと歩み寄りながら
風の天女へと・・・
水の天女へと・・・
音の天女へと・・・
緑の天女へと・・・
光の天女へと姿をかえ
やさしい光で
龍を包み込みながら囁きました
「私は 貴方をいつも見守り
愛しつづける者
貴方に命を授けた天女です
さぁ 思い出しなさい・・・
貴方が 光の巫女であることを・・・
さぁ 思いだしなさい・・・
貴方は いつでも自分の望む姿に
なれることを・・・」
|
|
|
「私は光の巫女などではない・・・
闇の龍だ!」
凍てついた唸り声は
星を揺るがし
大地を切り裂きました |
「貴方の その身が
どんな姿に変わり果てようとも・・・
あなたは
私の愛する 光の巫女に
かわりないのです」
光の天女は
その胸に 龍を 抱きしめながら
語り続けました |
|
|
「遙か昔・・・
私も 闇に飲み込まれ
闇の龍となりました
そして 闇を溶かす 光を
手にする事が出来たのです
貴方が抱く 闇が
深ければ 深いほど・・・
闇を溶かす まばゆい光を
生み出すことが出来るのです」
やさしく語り続ける
光の天女の穏やかな笑顔を
龍は まっすぐに見つめました
|
龍の瞳に
光の天女の笑顔が輝いた
その瞬間・・・
龍の瞳からは
涙が とめどなく溢れ出し
凍てついた星を
ゆっくり溶かしながら
星の全てを
洗い流してゆきました |
|
|
「さぁ・・・巫女よ・・・
貴方の闇に差しこんだ
僅かな光の記憶を辿りなさい・・・
そして 光と闇の記憶を
紡ぎ合わせるのです」
龍は 天女の愛に包まれながら
ゆっくりと瞳を閉じ・・・
闇の中の 光の記憶を
辿りはじめました |
龍は 一筋の光とともに舞い降りた
氷の天女の 全てを包みこむ雪のことを・・・
風の天女の 優しい風のコトバを・・・
水の女の 渇きを潤す恵みの雨のことを・・・
音の天女の 心躍る笛の音を・・・
緑の天女の 芽吹きの香りを思い出し・・・
光の天女の 愛に満ちた光を失って
寂しさと 悲しみが
闇の塵となって 体を覆いつくし・・・
辛さと 苦しみが
闇の埃となって 心に降り積もり・・・
心の輝きを失って
闇の龍へと
変わり果ててしまったことを
思い出し・・・
そして やっと・・・
自分が 光の巫女だった事を
思い出すことが出来たのです
|
|
|
「そうだ・・・
私は・・・光の巫女だったのだ・・・」
とめどなく溢れ出る涙が
龍の体を覆いつくしていた 闇の塵を
ゆっくりと ゆっくりと
洗い流してゆきました
不思議なことに 龍の体を離れると
光の粒となって
闇の世界に広がっていきました
そして かすかな光を 放ちながら
ゆっくりと ゆっくりと
光の巫女の姿へと 戻っていきました
|
「私は・・・光の巫女・・・
いつか必ず・・・
この星の闇と光を 紡ぎあわせて
光輝く星に変えると 貴方に誓った
光の巫女です!」
巫女の声が
銀河に 響きわたりました
巫女の声は 光となって
銀河にふりそそぎ
巫女の からだも
まばゆい光を放ちながら
さらに 輝きを増していきました
|
|
|
愛しそうに巫女を見つめながら
天女はゆっくりと語りました
「貴方の命を この星に委ねた時
私も貴方に 誓いました・・・
貴方が どんな闇に飲み込まれようとも
いつの日か必ず・・・
私と貴方が
再び1つの光となる日がくるまで・・・
何度でも 貴方の元へと舞い降りて
光の道しるべを 示しつづける事を・・・」
天女と巫女の心の光が
1つに重なりあった その瞬間
星の全ての闇と光は 溶け合って
美しい輝きにかわりました
|
闇の星に広がった 光の粒は
光の命の種となり・・・
巫女の流した涙は 海となって
光の命の種を やさしく包み込み・・・
天女の あたたかい光が
海を照らした その瞬間
海に包まれていた 光の命の種は
一斉に芽吹き
キラキラと輝きはじめました
そして 海は 雲となり
雨となって 大地に降り注ぎ
大地に抱かれていた
光の命の種は 一斉に芽吹き
キラキラと輝きはじめました
|
|
|
天女は 光の命の種に
そっと 誓いました
「愛しい光の子どもたちよ・・・
貴方が 命の芽吹きを繰り返しながら
いつまでも星と共に
輝きつづけられるように・・・
私は貴方を いつまでも
てらし続けましょう・・・
道に迷った時は、いつでも私の光と
巫女の流した涙の海が
一つになる瞬間に・・・
私に会いに来なさい・・・
私と貴方を繋ぐ 光の道を
示してあげましょう・・・」
巫女は 光の命の種に
そっと 誓いました
「愛しい光の子どもたちよ・・・
貴方が 闇と光を紡ぎながら
いつまでも星と共に
輝きつづけられるように・・・
私は貴方を いつまでも
見守り続けましょう・・・
闇に飲み込まれそうになった時は、
いつでも私を見上げなさい・・・
私が貴方の闇の行く先に
どこまでもついて行って
貴方と闇を 照らしてあげましょう・・・」
|
光の子供たちは
命の芽吹きを
幾千年も繰り返しながら・・・
小さな心の光と闇を
紡ぎあわせながら・・・
今もなお・・・
星と共に輝き続けています
天女と巫女の
無限の愛の光に
見守られながら・・・
|
|